「僕たちも行こうか」
樹くんがクスクス笑っている。
あっ、と思った。
やだ! 樹くんに子どもっぽいところを見られちゃった……。
わたしと楓くんがケンカして、ふてくされるわたしを樹くんがなぐさめてくれる。気づいたら、いつものパターンにおちいっていた。
はあーあ。中学生になったら、少しは大人になれると思っていたのになー。
小学生のころと、ちっとも変わっていない、ぜんぜん成長していないわたし……。
うわーん、めちゃくちゃ恥ずかしいよー!
わきあがる気恥ずかしさをかくして、「うん」と笑みを返す。
そうしたら、
「理子の荷物は僕が持つよ。昨日の体育でひねった手首、まだ治ってないよね?」
樹くんはわたしのカバンに手を伸ばしかけた。
荷物を持ってもらうなんて、とんでもない!
昨日だって荷物持ちをさせちゃったもん。
「今日はカバンがパンパンで重いから! 痛みも昨日ほどじゃないし……」
「重いなら、なおさらだよ。僕は楓みたいに部活バッグ持ってないし、ほら見て。ちょうど片手が空いている」
わたしに、ひらっと手のひらを向けた樹くん。長くて細い指が、チョウのように優雅に舞った。
「ちゃんと治るまでは、荷物持ちくらい、僕にさせてほしいな」
