鼓動がドキドキとアンダンテになっていく。

 うそー!

 よりによって、楓くんに会うなんて……!

 今いちばん会いたくなかったのに。

 ドキドキと鳴っている鼓動をかくしながら、なんて返事しようか必死に考えた。

 あんなにうわさになっているもん。

 樹くんに告白されたこと、たぶんもう耳に入っているよね……?

 だからって、自分から話すのもなんかヘンだし……!

「おい、聞いてんのか? 何ビクついているんだよ?」

 楓くんは質問をくり返した。

 すぐ返事をしなかったわたしを、ちょっと気に入らないみたい。

 どことなく怒っているような気がする……。

 こ、ここは話をそらすしかない!

「い、今っ、帰り? 部活、もう終わったの? はっ、はやいね~」

 わたしはとっさに「えへへ」とおどけて、やんちゃな笑みを浮かべた。

「今日は歯医者に行くから、はやめにあがったんだよ」

 楓くんは、説明するのがめんどうくさそうに答えた。