もうそろそろ、いいかな……?

 頃合をはかったわたしは、カバンを抱えてコソコソ教室をでた。

 静まりかえったろうかを通って、足音をたてないように階段をおりる。

 だれともすれちがうことなく、昇降口にたどりつくことができた。

 あとは、ほかの部活をしているひとたちに見つからないように、裏門へ回るだけだ。

 けれども、そのことにすっかり安心してしまい、気がゆるんだせいもあると思う。

 昇降口の外の階段をおりたところで「おい」とよびとめられるまで、うしろから近づくひとの気配に気づかなかったんだ。

「ひええっ!」

 ギクッとしてふり返ったら、そこにいたのは楓くん!

 楓くんはサッカー部の練習着のままだった。部活バッグとスクールバッグの両方を肩からさげて、不思議そうにわたしを見おろしている。

「何ビクついてるんだよ?」

「あ、あっ、か、楓、くん……」