ボールが飛んでいった方向は、楓くんの真上だった。
宙に浮いているあいだにくるっとターンして、ボールを背中でピタッと受けとめたんだ。
わあっ、すごい!
わたしは思わず身を乗りだしてしまいそうになった。
楓くんったら、大道芸人のパフォーマンスをしてるみたい。
すごく上手になったんだなあ。
記憶の糸がまわりだし、するする昔の思い出をたぐりよせる。
わたしは、幼稚園に入る前の、小さかったときを思いだした。
あのころは、三人で仲よくボールのけりあいっこをしていたね。
暗くなるまで遊んでいたせいで、いっしょに怒られたこともあったね。
いっぱい、いっぱい笑いあっていたね。
今でもあのころと変わらないつもりでいたけれど、変わってしまったことがある。
それは、わたしだけ女の子だって気づいてしまったことだ。
