樹くんのせいだなんて、これっぽっちも思っていないのに……。
うれしくなって、樹くんのやさしい笑顔を思い浮かべる。
ふと思った。
わたし、やっぱり樹くんが好き、なのかな……?
うれしかったってことは、そういう意味なんだよね……?
もの思いにふけりそうになったとき。
優雨ちゃんは申し訳なさそうにポリポリほっぺをひっかいた。
「じつはあたし、これから合唱部の活動があるんだ。コンクールが近いから、帰るのも遅くなっちゃいそうで……。まかせてって言っときながら、いっしょに帰れなくてゴメンね」
わたしを拝むようにパシッと手をあわせる。
「あやまらないで! だいじょうぶだよ、ひとりで帰れるからっ」
「だいじょうぶ?」
「うん、だいじょうぶ。優雨ちゃん、練習がんばって!」
「ほんとにゴメンね。じゃ、また明日ね」
あやまりながら教室を出ていく優雨ちゃん。
