放課後になった。
職員室に日誌を置きにいっていた優雨ちゃんが戻ってきた。
「理子ちゃん、お待たせー」
と、わたしの肩のうしろをポンとたたく。それから、こっそり耳打ちしてきた。
「今日は別々に帰りたいって、樹くんに伝えてきたよ」
うちの学校は、個人のスマートフォンなどは学校内では使用禁止。
そのため、樹くんへの伝言を優雨ちゃんに頼んでおいたんだ。わたしと優雨ちゃんで考えた苦肉の策だった。
「ありがとう……それにゴメンね。こんなこと頼んで……あっ、だいじょうぶだった? 優雨ちゃん、何もされなかった?」
わたしの心配をよそに、優雨ちゃんは「ムフフ」と笑った。
「理子ちゃんが心配するようなことはなかったよ。樹くんに声をかけたとき、ちょっとにらまれたから、こっちもにらみ返してやったけどね」
ケロッとした顔で言う。
「え、にらんだの!?」
「ほら、あたしって強いからー」