翌日。
わたしの不安と優雨ちゃんの心配は、思いがけない形で現実になった。
どうしてなのか理由がわからないけれど、樹くんに告白されたことが学校中に広まってしまったんだ。
うわさを聞きつけた樹くんのファンのひとたちが、休み時間になるたびに、教室の前のろうかに入れかわり立ち替わりやってきて、わざと大きな声で聞こえよがしにささやいた。
「ねー、見てよ。あの子が野々村樹くんの好きな子だって。幼なじみらしいよ」
「へえええ、あの子が?」
「なーんだ、どんなにキレイな子かと思ったら……」
「ガッカリ!」
わたしだけなら、まだガマンできる。
でも、樹くんまでわるく言われているみたいで、くやしくて仕方なかった。
樹くんのファンじゃなかったの?
どうだっていいでしょ?
ほっといて!
いろんな感情がマーブル模様みたいに混ざりあって、わたしの中でぐるぐるしていた。
けど、わたしのほうから何かアクションをとったら、また、それがうわさになって大変なことになるのは明らかだ。
クラスメイトたちも不安そうに、彼女たちとわたしのようすをうかがっていた。
くやしいけれど、わたしにできることは何もない。
ろうかを見ないようにして、平気なフリをするしかなかった。
それでも、と心の中でわたしは誓った。
ぜったい、泣いたりしない。