ポツン、またポツンと、雨は樹くんの上にも落ちてきた。

 バランスのとれた目鼻立ちがクシャッとくずれて、笑顔になる。

「これからは、僕が理子を守る。今朝みたいな思いは二度とさせない。だから、つきあってほしい。僕の彼女になってほしいんだ」

 わたしは彫像のように動けなかった。

 抱きよせられたまま、樹くんを見つめかえした。

「樹くん……」

 うれしかった。

 本当のことを言えば、うれしかった。

 でも……。

 好きって言っていいのかな。

 どういうわけか、とまどってしまったんだ。

 楓くんの顔が頭の片隅に浮かんでいた。

「か、楓くんは……? どうするの……?」

 そうだよ、楓くんは……?

 楓くんは、どうなってしまうんだろう。

 いつも三人いっしょだったのに。

「楓のことなら心配いらないよ。折を見て、僕のほうから話しておくから。理子は、安心して待っていればそれでいい」