考えごとをしているのかな。
怒っているのかどうか、見分けがつかない樹くんの顔。
ただ、静かにまっすぐわたしを見つめている。
どのくらい、見つめあっていたんだろう。
「あのさ、理子」
樹くんはフッと笑った。
まぶしいものを見るみたいに、アーモンドの形をした目が細くなる。
「僕は理子が好きだよ。幼なじみとしてだけじゃなく、たったひとりの大切な女の子としてね。ちっとも気づいていなかっただろ?」
えっ……。
ポツンと雨のしずくがひとつぶ、頬にあたった。
しずくは、あとからあとから落ちてくる。
「頼むよ、僕から離れようとしないで」
わたしは樹くんに抱きしめられていた。
