ドキッとした。
樹くんが自分のことを「僕」じゃなく「おれ」と言うときは、本気で怒っているときだけだったから。
その証拠に、樹くんの口もとから笑いが消えている。
わたし、樹くんを怒らせちゃったの?
え、どうして?
「そそそそんなことっ、メーワクだなんてっ」
思わずうろたえて、あからさまに声がうわずってしまった。
「本当?」
樹くんがたずねる。
「うん、本当!」
わたしはコクコクと上下に首をふった。
「……じゃあ、僕たちを嫌ってないんだね? なのに?」
今度は、ちょっと困り顔な樹くん。一人称も「おれ」から「僕」に変わっている。
はた、と思った。
ひょっとしたら、ゴカイされているだけかも……?
きっと、「三人で登校するのをやめよう」って、わたしが急に言いだしたからだ。
わたしは説明しなくちゃ、と焦った。
「嫌ってなんかないよ、ふたりとも大好きだよっ。だって、大切な幼なじみだもん! わたしがふたりを嫌うことなんて、ぜったいないよっ。今までも、これから先だって……」
