もう、楓くんへのわだかまりはないみたい。
そのやわらかな笑みを見て、わたしは安心した。
ところが、
「そのかわり、頼みがあるんだ。告白の返事を今ここで聞かせてくれないかな? これからも理子の幼なじみでいたいんだ」
樹くんは急にびっくりするようなことを言いだしたんだ。
まさか……。
樹くん、わたしの気持ちを知っていたの?
いつかは返事をしないといけない、と思ってはいたけれど。
今、ここで?
わたしは思いきりとまどってしまった。
樹くんは笑っていない。
ジッと、わたしを見つめている。
「もう、言えるよね?」
樹くんは沈黙を破った。
そのとき、見えない手に背中を押されたような気がした。
わたしは自分の中の、ありったけの勇気をかき集めた。
胸の奥の痛みを感じながらも、深くうなずく。
「わたし、楓くんが好き……。樹くん、ごめんなさい。でも、ありがとう……」
