「おっ、おはよう!」
わたしはあわてて通路にでて、ドアを閉めた。
自分より背が高いふたりの顔を見あげる。
「待たせちゃってゴメンね……! ドライヤーがとうとう壊れちゃったの。寝ぐせを直すのに時間がかかっちゃって~」
頭をかきながらあやまったら、樹くんはわたしの顔をのぞきこむように、ちょっとだけ首を右側に傾けた。
「そんなに待っていないから、だいじょうぶだよ」
樹くんの声は、包みこんでくれるみたいにやさしい。
そのやさしさに触れると、わたしの心はふわふわしてうれしくなる。
そんな樹くんとは反対に、楓くんはとっても意地悪だ。
「樹、甘やかすなって。理子がのろまなだけなんだからさ」
と、横からからかってくる。
今日もさっそく、わたしへのいじり攻撃がはじまった。
「のろまじゃないもん、ちょっとひとより遅いだけだもん」
わたしがプンとむくれたら、
「知らねーのか? それを“のろま”って言うんだよ」
楓くんのくちびるの端がニヤッと上向きになった。