わたしが持っていたスマートフォンを見たお母さんは、ゆさゆさ、わたしのからだをゆらした。
「理子、シッカリなさい! まだ状況がわからないでしょう、病院に行くわよ!」
*
夜道を照らす車と何台もすれちがう。
テールランプの赤い光を見送るたびに、向こうの車は流星のようにはやいのに、どうしてうちの車は遅いのだろうと気が急いてしまった。
やっと病院の救急に駆けつける。
「いた……」
処置室の前で楓くんを見つけた。長イスにすわって、楓くんは頭を抱えるようにうつむいていた。そのとなりの美代子おばさんもひどくつかれたような顔をしている。
「野々村さん……」
お母さんが声をかけると、ふたりはこちらをふり向き立ちあがった。フラッと倒れそうになったおばさんの肩を、楓くんが支える。
楓くん!
のどから出かかった言葉を、わたしはあわてて飲みこんだ。