わたしたちがマンションに着いたのは、夕暮れ時だった。
窓の明かりがポツポツ灯っていたけれど、野々村家の窓の明かりはついていない。まだ、だれも帰っていないらしい。
マンションの窓を外から見あげていたら、楓くんの口からため息がこぼれた。
「帰ってないってことは、なんとかなったってことだな。さすがアニキだ。頭が上がんねーや……」
楓くんはホッとしているようだった。
そのあとエレベーターに乗りこんで、わたしんちの前で別れた。
「楓くん、また明日」
「おう、明日な」
楓くんはちょっとななめに顔をかたむけ、わたしと目をあわせてニッと笑った。それからジーンズのポケットに両手を突っこみ、ゆっくり通路を歩いていく。
今日はいろんなことがあったね。
おやすみ、楓くん……。
わたしは楓くんを見送った。
明日もまた会える。
このまま今日という日が終わっていく――――と思っていたら。