鉄さびと道ばたの雑草のにおいがツンとする。
絵の具のチューブをしぼりだしたような灰色の空が広がっていた。
今朝は真っ青な空だったのに、いつのまにか雨模様だ。
町工場の角をひとつ曲がったら、わたしたち以外の中学生はいなくなった。
樹くんとふたりきりだった。
流れた沈黙がやけに長く感じるのは、気のせい?
何か話したほうがいいかな。
でも、なんて話を切りだしたらいいんだろう。
それとも、このままだまっていたほうがいいかな。
わたしって、そもそも樹くんとどんなふうに会話していたっけ……?
はあ、困った。
そんなふうに考えごとをしながら歩きつづけていると。
「理子、聞いてもいい?」
樹くんが、くるりと肩をまわして、わたしのほうに向き直った。
ドキッ。
とうとう、このときが来ちゃった……!
「う、うん!」
それでも万が一ちがったときのために、とっさにうなずく。
「さっき別れ際に、有本さん、なんか気になることを言ってたよね? 僕に話を聞いてもらうといいよ、とかなんとか? それってなんの話?」
樹くんは、きょとんと不思議そうにわたしを見つめている。
「僕が知らないうちに、困ったことがあった?」
そうだよね。
なんで万が一なんて一瞬でも思ったんだろう。
わたしのバカバカバカ!
