駅前で「アイスクリーム」というのぼりが目に入った。
わたしは楓くんの服の袖を引っぱった。
「楓くん、ほら見て! そこのコンビニ、アイスだって」
「なんだよ、食いたいのか?」
「うん、食いたい! おごって!」
大げさなくらい、期待をこめたまなざしでジーッと見あげる。
「……しょうがねーなあ」
楓くんはため息をついた。
ムフフ、おごってもらっちゃった!
わたしの大好きな、クリームソーダのカチカチに凍ったアイスだ。
ニマニマしながら、ペロッとひとなめ。
「うーん、冷やっこい!」
「そんなにのんびりしてたら、溶けても知らねーぞ」
「わわっ、ホントだ!」
この暑さのために、カチカチだったアイスが汗をかき、どんどんやわらかくなっていく。
あわてて食べていたら、楓くんがうれしそうにほほ笑んでいるのに気づいた。
「うまそーに食ってんな」
