このまま流されそうでこわかった。
今「うん」とうなずけば、しあわせが手に入るだろう。
けど、それはホンモノのしあわせじゃないかもしれない。
楓くんが樹くんとして、樹くんが楓くんとして生きているかぎり――――。
わたしはどうしてもうなずくことができなかった。
「ま、まだ返事してないから……樹くんに告白されて……だ、だから……」
そう、わたしにはやるべきことが残っている。
だから今は。
「ごめん、なさい……」
「そっか、そうだよな……」
楓くんはポツリと言った。
「やっぱ、今の聞かなかったことにしてくれ」
「楓くん!」
わたしは楓くんの広い胸の中に顔をうずめて泣いた。
楓くんは何も言わずに、わたしの頭をなでてくれた。
ゴメン、楓くん。
ゴメンね……。
「もう帰ろう」
今度は「うん」とうなずいた。
*
