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わたしたちは砂浜におりた。
寄せてくる波に素足を浸しながら、やわらかな砂を踏んで歩いた。
「わあー、気持ちいい!」
海って不思議。しおれていた心とからだに元気がよみがえってくるようだよ。
風が強かった。
頬にまとわりつく髪を手でおさえて、楓くんを見あげる。
「来てよかったね、楓くん」
「ああ」
楓くんはそう言って、水平線へと目を向けた。
「……おれ、ざまぁねえよな。理子とアニキは気づいていたのに」
弱々しい声が切れ切れに聞こえた。
「自分たちの都合だけで、ものごとを判断していないかって言われたとき、すげーショックだった。結局おれは自分だけがかわいかったんだ」
「そんなことないよ、楓くん。楓くんも必死だったんだから。だれでもまちがうことくらいあるよ。わたしだって――」
「理子が好きだ」
