後藤さんのさくらんぼのようなくちびるから、ポツンと言葉をこぼれた。みるみる目に涙が盛りあがっていく。

「ごっ、ごめんなさい! あきらめるって約束したのに……!」

 まぶたをギュッと閉じてさけぶと、後藤さんは弾かれたように走りだした。

 遠ざかっていく足音。

 わたしたちは何も言えずに立ちつくした。

 後藤さんを傷つけてしまった。

 そんな資格、これっぽっちもないのに。

 うしろめたさが、じわじわと足もとからはいあがってきた。

「おっ、追いかけなきゃ! 後藤さんをひとりにしておけないよ……」

「僕が行く。こうなった直接の原因は僕だ」

 樹くんが言った。

「彼女に話してわかってもらうよ。きみの気持ちには応えられないって言う。それでいいな、楓?」

「……ああ」

 樹くんはポンポンと楓くんの肩をたたいた。

「そのかわり、理子はまかせたぞ」