ギュッと眉を真ん中に寄せて、ふたりはにらみあっている。

 まるで見えない火花が散っているみたい。

 とつぜんはじまったケンカに、後藤さんはびっくりして身動きできないでいた。花が色あせるみたいに顔が青ざめている。

 や、やばい!

 わたしは飛びあがった。

「ふたりとも! ケンカは……!」

 おねがい、やめて! と言おうとしたら。

「理子、心配するな」

 樹くんにさえぎられた。

 予想に反して、ピーンと張った緊張の糸がゆるんだ。

 樹くんは、やさしい瞳をわたしだけに向けていたんだ。

「ケンカなんてしねーよ。気をつけて帰れよ。あとで会いにいく」

“あとで会いにいく”

 やさしい笑顔を向けられて何も言えなくなってしまった、わたし。

 だまっていると。

「それが、答え、なんだね……」