「あっ、ありがとう、樹くん」
手を離してくれたことにホッとした。
けど、カバンを持ってもらっちゃったから、また何か言われそうだな。
しかも、ここは校内だ。
今朝よりもチェックが激しいだろうな……。
ひそかにおどおどしていると、近いところから声が聞こえてきた。
「理子ちゃん、迎えにきてもらえてよかったね!」
優雨ちゃんが頬を紅潮させながら、ニコニコしていたんだ。
「う、うん」
「そうだ! あたしだけじゃなくて、樹くんにも話を聞いてもらったら?」
わたしの両肩に手を置いて、樹くんのほうへとグッと押しだす。
「ええっ! ゆゆっ、優雨ちゃん!?」
わたしは飛びあがった。
「話って?」
樹くんが首をかしげる。
「それは、理子ちゃん本人に聞いて♡」
優雨ちゃんは、語尾にハートマークをつけた。
そそそ、そんな!
っこと、言っちゃって~!
わたしがあわあわしているうちに、
「話のおじゃましちゃ悪いから、さよならはここでっ。また明日ね~!!」
ムフフとうれしそうに手をふってから、優雨ちゃんは制服のスカートのすそをひるがえした。
優雨ちゃ~ん、待って!
置いていかないで……!
わたしが「さよなら」を言うまもなく、あっというまに姿が見えなくなっちゃった。
ガックリ……。
そろりと目だけを横に動かして、樹くんを見たら。
ビクッ!
樹くんは何かを考えこんでいるような目をしていた。
どどどっ、どうしよう。