自分が情けなくなってきちゃった。
だんだん声が小さくなっていく。
終いには、何も言えなくなって口を閉じてしまった。
しばらくすると、楓くんは口をひらいた。
「後藤さんはアニキじゃなくて、おれにほれてれるんだぞ? おれたちの中身が入れかわってることも知らねーんだから、しょうがねーじゃん」
後藤さんは楓くんを好き。
樹くんが楓くんでいるかぎり、樹くんに彼女をまかせるしかない。
そんなことくらいわかっているのに、どこか納得できない自分に気づいた。
「だって、わたし、『しょうがねーじゃん』って割り切れないもん……!」
わたしは楓くんの服をつかんで立たせた。
「ねえ、後藤さんにしていること、まちがってない? 本当にこれでいいと思う? 自分たちの都合だけで判断していないかな」
「理子……」
