「ちがうよ、樹くんはここにいるもん……か、楓くんは向こうで……」
くやしい気持ちがわいてきて、あとからあとから涙がこぼれた。
息が苦しくて、言葉をつまらせながらもそう言うと。
「おれはどうかしてた。あんなこと頼むんじゃなかったよ。自分でなんとかすべきだった。ゴメン、泣くな。全部おれのせいだから…うらむなら、アニキじゃなくておれにしろ」
ギュッと力いっぱい抱きしめられたんだ。
ドキン。ドキン。
早鐘のように伝わってくる心臓の音。
ドキン、ドキン。
ボンヤリしていた頭がハッキリしてきた。
わたしをつかまえ、まっすぐな強い視線で見つめてくる、この男の子は――。
「楓くん! 楓くんだ……」
わたしはポカポカと楓くんの胸をたたいた。
「バカバカ、どこに行ってたの? ひとりで心細かったんだよ!」
「どこって、アイスを買いに行ってたんだよ。おまえがよろこぶと思って! 戻ったらいねーから、心臓が止まるかと思った……!」
