帰りの会が終わり、優雨ちゃんといっしょに教室をでていくと。
「理子」
人混みの中から樹くんが、笑いながら手をふってきた。
「迎えにきたよ。いっしょに帰ろう」
さわやかな笑顔を目にしたとたん、
「樹、くん……!」
なんかとまどってしまった。
「手首どう? 痛くない?」
樹くんはわたしの手をとり、まんべんなくチェックをはじめた。
心配してくれるのはうれしい。
で、でも――優雨ちゃんが、みんなが見ているよ……!
ろうかや教室の窓など、いろんな方角から、たくさんの視線を感じた。
「どっちが本命なの?」なんて、優雨ちゃんに言われてしまったあとだけに、身をよじりたくなるような恥ずかしさに襲われてしまう。
よけいに意識しちゃってドキドキするよ。
それでも、やっぱり「イヤ」って言えなくて。
「だ、だいじょうぶ! ちっとも痛くなかったから!」
必死に口を動かし、なんとか答えると。
樹くんのキレイな眉がキュッとあがった。
「けど無理は禁物。帰りも僕がカバン持ちするからね」
樹くんはそう言って、わたしの手をていねいにおろした。今朝と同じようにわたしのカバンを持ってくれる。