わたしの好きなひとは楓くんなんだから。
楓くん、気づいてる?
わたしたち、ふたりきりで歩いているんだよ。
デートなんだよ、デート!
はあ、気づいてくれたらいいのにな……。
*
おしゃべりしながら歩くうちに、坂の下にゾウの檻が見えてきた。
二頭のゾウたちが長い鼻を器用に使い、足もとのキャベツを口に持っていってはムシャムシャ食べている。
「わあっ、すごーい!」
わたしは楓くんのうでを離し、いちもくさんにゾウの檻の前に駆けていった。
名前が書かれたカンバンが目の前にあった。この二頭のゾウはアジアゾウという種類で、オスとメスらしい。
へえー、カップルなのかな。
こないだ、赤ちゃんが生まれたばかりだって。
えー、残念。赤ちゃんはまだ見られないんだ。
せっかく来たんだもん。写真を撮っちゃおう。帰ったら、お母さんに見せるんだ。
