電車が目的の駅に到着し、たくさんのひとがホームにはきだされた。みんなの行く方向は同じ。動植物園のエントランスに通じている道だ。
樹くんと後藤さんは、どこにいるんだろう。
この人混みでふたりを見失ってしまった。
きょろきょろ周囲に目を配りながら歩いていると、
「あの二人のこと、そんなに気になんのか?」
楓くんに頭をポンポンとされた。
「!」
今の仕草は樹くんみたいだった……。
そ、そりゃあ、楓くんは樹くんとしてふるまっているからあたりまえだけど。
わかっているのに、なぜだか動揺した。
わたし、さっきからヘンだ。
楓くんにふれられるたびに、胸がドキドキしている。
「きっ、気になるよ! だって中は樹くんだもん……!」
楓くんだけに聞こえるように小声で言う。
すると、楓くんは意味ありげにニッと笑った。