電車はスピードを落とし、カーブに入っていく。

「あっ」

 そのとき足がフラついて。

「おっと!」

 楓くんは、とっさにだした右手で、わたしの腰を支えてくれた。

「だいじょうぶ、理子?」

 樹くんのように、楓くんは笑った。

 かああっと頬が熱くなる。

「う、うんっ。だいじょうぶ。あ、ありがと……」

 うわあ、からだじゅうが密着しているよっ。

 こんなことくらい今までは平気だったのに。

 楓くんへの気持ちを知ってしまった今は、もうぜんぜんダメ!

 とにかく、近くにある楓くんの肩と胸から逃れたかった。

 首だけでも動かそうと、ぐりんとひねってみる。

 すると、ひと組のカップルの姿が目に入った。

 ……樹くんと後藤さん!

 今のカーブで樹くんに助けてもらったらしく、後藤さんの手は樹くんの胸に置かれていた。その半分うるんだ瞳を見てわかった。

 彼女は樹くん、ううん、楓くんのことが好きなんだ。

 すごくショックだった。

 楓くんに恋している子が近くにいるなんて――――。