「なあ、あんたたちは知ってんの？　楓のアニキと、うわさの理子ちゃんだろ？」

　彼らの中のひとりが、わたしと楓くんに聞いてきた！

　うわさの理子ちゃん！？

「しっ、知らないよ！」

　思わずドッキリして、大きな声がでちゃった。

　同じ車両に乗っていたひとたちが何事かと、わたしに目を向けてくる。

　楓くんと後藤さんもだ。

　ひええ、めちゃくちゃ恥ずかしいよう。

　ふたりがどんな顔をしているのか確かめる前に、わたしはパッとうつむいてしまった。

「本人に聞いてくるんじゃねーよ」

　楓くんがボソッ。

「……？」

　彼らが不思議そうに首をかしげた気配がして。

　楓くん、なんてこと言うの～？

　飛びあがりそうになったとき、ちょうどアナウンスが流れた。

「ご乗車くださりありがとうございます。まもなく動植物園前――」

「お、次だ」

「次、おりるってよ」

　ガタン、ガタタン。