不思議なことに、優雨ちゃんの言葉が魚の小骨のようにひっかかった。

 授業に集中できず、

『それで理子ちゃんは? どっちが本命なの? 樹くん? 楓くん?』

 頭の中を何度もリフレインしていた。



 ひそかにあこがれているのは、本当のお兄ちゃんみたいにやさしい樹くんだ。

 鉄砲玉のような楓くんひとりの世話だけでも大変なのに、ただ、幼なじみというだけで、わたしの面倒まで見てくれる。

 たぶん樹くんも、わたしと同じ。

 わたしのことを妹みたいに思っているだろうな。



 反対に楓くんは、ちょっとニガテ。

 中学生になってサッカー部に入ってから急にモテだして、わたしから見てもカッコよくなったなあって確かに思う。

 でも、わたしにだけ、あいかわらず意地悪ばかりしてくるんだもん。今朝みたいに少しはやさしいところがあるけど。基本的には意地悪だ。



 やっぱり、いくら考えてもわからないよ。

 今までふたりのことを本命として、キチンと考えたことがなかったから。

 いっしょにいるのがあたりまえすぎて、恋の相手に、なんて思ったことがなかったから。



 優雨ちゃんの言うとおり、どちらかを選ばないとダメかな。

 それとも、ふたり以外のひとを好きになる?

 ずっと幼なじみの三人でいられたらいいなって、そう願うだけじゃヘン?

 わたしと同じ年頃の子は、ハツコイを経験している子が多いかもしれない。

 けど、わたしは未経験だ。



 こんな調子じゃ、わたしのハツコイはまだまだずっと先みたい……。