「うっす、後藤さんも来たんだ?」
樹くんが彼女に向かって返事をした。
「来たんだ、ってひどいよー。野々村くんったら――」
さくらんぼ色のくちびるから、花のように笑みがこぼれる。
冷たい水を頭からかぶったような気がした。
え、この子、だれ……?
樹くんに「後藤さん」と呼ばれた女の子は、わたしと楓くんを見た。
「おれのアニキの樹、と……幼なじみの理子」
樹くんは彼女にわたしたちを紹介してくれた。
「んで、こっちは後藤さん」
つづけて、樹くんは彼女をわたしたちに紹介すると、彼女はニッコリほほ笑んだ。
「サッカー部マネージャーの後藤ひよりです。よろしくね」
後藤さんの丸みを帯びた女の子らしい頬が、つややかに光っていた。
すべすべとした肌、ちょっと指先でつまんだような鼻先、長いまつげにふちどられた瞳。
わたしとちがって、神さまが特別に丹精をこめたみたい。
