「おせーぞ、楓!」
そのなかのひとりが親しげに声をかけてきた。
どこかで見覚えのある顔……。
うーん、どこだったかなあと考えて、パッとひらめいた。
あっ! あのひと、楓くんとプロレスごっこをしていたひとだ!
男の子ばかりだと思っていたら、女の子たちも何人かいることに気づいた。
サッカー部のひとたちのカノジョだったりするのかなー。なんとなく、みんなそわそわして、ハートが飛びかっているような気がする。
よかった、部外者はわたしだけじゃなかったんだ。遊びに行こうって誘われたとき、じつは少し気にしていたんだ。
ホッとしていたら、
「野々村くん、おはよ」
砂糖でコーティングされたような、ちょっと舌っ足らずな甘い声がどこからかした。
女の子の声だったから一瞬ドキッとしてしまった。けれど、もちろん呼ばれたのは楓くんじゃなかった。
