「おまえがジャージでいいって言うから、こうなったんだろ? 母さんも『あの樹が……!』っておどろいていたじゃないか」

 ふうん、なるほどー。

 美代子おばさんは樹くんが『ジャージでいい』と言うのを聞いて、任せておけない! って思ったんだね。今の樹くんの中身が楓くんなのを当然、知らないから。

 これが楓くんだったら、こうはならなかっただろうなあ。

「うっせーな、わるかったよ。おれの失言だったよ」

 楓くんも過ちを認めて、めずらしく素直にあやまった。

「もう失敗するなよ。楓は僕ってことを忘れないように!」

「へいへい」

 ひとまず話が終わったので、わたしは通路に出てドアを閉めた。

「理子、ヘンかな? なんか落ち着かなくて」

 樹くんが心配そうに聞いてくる。

「ううん、ちっともヘンじゃないよ。とくにその帽子、似合ってる」

「うん、バケットハットって言うらしいんだ。サングラスまで持たされたよ」