「!」
わたしはハッとした。
「あのさ、おまえアニキのどこが好きなわけ? 性格? 顔? くわしく言ってみろよ」
楓くんが、たたみかけるように質問してくる。
「本当の正直な気持ちは、どうなんだ?」
心臓がドキドキ音をたてていた。
わたしをとらえて離さない、まっすぐな瞳。
樹くんの姿をしているけれど、樹くんじゃない。
中身は、まぎれもなく楓くんだ。
やめてよ、楓くん。
樹くんの顔で、そんなふうに見つめてくるなんてずるいよ……!
心のなかをのぞかれたような気がして、かあっと頭に血がのぼった、ちょうどそのとき。
「理子!」
わたしをよぶ声がした。
見ると、樹くんがサッカー部の仲間とわかれ、こっちに走ってやってくる。
この話題から逃げられる!
わたしはパッと制服のスカートをひるがえし、樹くんのもとへ駆けていった。
「樹くん、おつかれさま! 試合すごかった! 大活躍だったね!」
動揺をかくしてニコッと笑顔を向けた。
