「練習試合は、ぜったい応援に行かなきゃ。ねっ、楓くん!」
声をかけながらふり向くと、楓くんはくちびるをかみしめていた。
くやしそうな瞳。
その視線は樹くんへと注がれている。
楓くんの心の声が聞こえてきそうだった。どうして自分は傍観者として、ここにいるのだろうと。
胸がとても痛かった。力になりたいとねがっているのに、何もできない自分がとても歯がゆくて。
「楓くん……」
もういちど呼びかけたら、楓くんはやっとわたしを見てくれた。
「ああ、そうだな」
無理をして笑っている。
さびしさに似たぬるい風が、わたしたちのあいだを吹きぬけていった。
*
サッカー漬けの夏休みの後半、他校と練習試合の日を迎えた。
場所は、うちの学校のグラウンドだった。
頭上には、目にしみるような青空が広がっている。
その下で、ユニフォームを身につけた十一人が、試合前の準備体操をはじめた。
