本当に優雨ちゃんに話してよかった。
樹くんと楓くんにこのことを知らせたときは、さすがにおどろかれた。
けれど、何かあったときのために、味方をつくっておいたほうがいいかもと、考え直してくれたんだ。
「理子、親にはぜってー話すんじゃねーぞ! いいな!」
「よけいな心配をかけたくないからね。血圧が上がるかもしれないし」
もちろん、クギは刺されちゃったけどね。
そうこうしているうちに、休憩に入ったみたい。
サッカー部のひとたちは、タオルで汗を拭きながら校舎の日陰に入って、コンクリートの上に足を投げだすようにしてすわったんだ。
でも樹くんはまだ休憩に入らない。
ジーッ、ジーッ。暑苦しくセミが鳴く中。
赤いコーンのあいだをドリブルしながらジグザグに走っていく。
背中の部分に汗で大きなシミができていた。
樹くんは自分の力のかぎりがんばっている。
わたしも応援しよう。
樹くんのために、楓くんのために。
そして、わたし自身のために。
いまはこうして見ていることしかできないけれど……。
