「言っとくけど、マジでほかのだれにも話すなよ。事情を知っている人間をあまり増やしたくねーんだ」

 楓くんはポケットに手を入れて、足もとにあった小石をけとばした。

「……まあ、理子の大親友ってんなら、おれも信用するけど?」

 そのとたんに、優雨ちゃんは「キャー!」と大きな声でさけんだ。

「えーっ、やあねえ! 楓くんったら! あたしを好きになっちゃった? 残念だけど、あたしにはカレシがいるのよっ。おーほっほっ、期待させてごめんあそばせ~!」

 楓くんの背中をバンバンたたく。

「だーっ! そんなことっ、ひとっことも言ってねーだろ!」

「へ? そうだった?」

 ぶっ!

 とつぜん目の前ではじまった漫才に、わたしはガマンできずに吹きだした。

 楓くんが真っ赤な顔で、わたしのほうをふり返る。

「理子、笑ってんじゃねーぞ!」

「だっ、だって~! おかしいんだもーん」