わたしたちの目から見ても、個人練習は順調だった。
心なしか樹くんの表情も明るい。
心から楽しんでいる様子が伝わってきた。
あそこでボールをけっているのは楓くんだと、わたしまで錯覚してしまいそう。
そう思うのは、わたしだけじゃなかった。
「本当に信じられないや。楓くんの中身が、あの樹くんだなんて……」
フェンスに貼りついていた優雨ちゃんも、ひとり言のようにつぶやいている。まん丸な目がますますまん丸だ。
「で、こっちが楓くん、と……」
って言いながら視線を動かし、楓くんを見あげた。
「ほ、本当に?」
「さっきからなんだよ、しつけーな」
楓くんは、あからさまに嫌がっている。
「いやあ、だって理子ちゃんから聞いて知ってはいるけれど、やっぱりこの目で見ると見ないとじゃ、ぜんぜんちがうし……。ゴメンゴメン!」
優雨ちゃんは、申し訳なさそうにあやまった。