終業式を経て、夏休みがはじまった。
サッカー部の練習試合は、お盆休み明け早々にあるらしい。
わたしは楓くんと優雨ちゃんといっしょに、さっきからサッカー部の練習をフェンス越しに見ていた。
キラキラ、夏の日差しを反射する人工芝のグラウンド。
白いゴールに、くっきりとした黒い影。
ビブス姿のひとたちがフィールド上に散らばっている。
たくさんのにぎやかな声がここまで聞こえてきた。
「ブランクがあるので、当分は基礎中心のメニューを組みたいんです」
前もってリクエストしておいたせいもあって、基本の練習に励む樹くんを不思議に思うひとは、さいわいひとりもいなかった。
それどころか、パスのコンビネーションの確認をていねいにひとつひとつ、つきあってくれる部員までいたんだ。
楓くんのサッカーへの情熱と、樹くんの練習熱心な態度。
みんなが協力してくれるのは、その両方を見ているからこそ、だよね?