けれど昨日とちがって、今度は安心して見ていられた。
フフッ、おもしろーい!
「理子、笑ってんじゃねー!」
楓くんがぎろっ。
「あ、ゴメン」
えへへ、おもしろがっていたのがバレちゃった!
「ンなことより、練習を再開しよーぜ。今度は理子を入れて三人でパス練だ。いいな、理子。つかれたら、ちゃんと言えよ」
自分に不利な状況だと悟ったらしく、楓くんはボールを持って離れていく。
「あ、楓くん!」
とっさに呼びとめてしまった。
「なんだよ」
楓くんはふり向かなかった。
わたしに背を向けたままだった。
「誘ってくれてありがとう」
「……こっちこそ、わるかった」
わたしはスタスタ歩く、そのうしろ姿を見送った。
なんだかんだうるさく言ったり、意地悪をしたりするときがあるけれど、楓くんもとってもやさしい。
樹くんとは、そのやさしさの形がちがうだけなんだ。
