樹くんがお茶目にウインクしてきたので、わたしもポッと赤くなってしまった。
なんて返事したらいいかわかんない……。
「え、えーと……」
困って指をもじもじさせていると。
「アニキ! どさくさにまぎれて何言ってんだ」
楓くんが助け船をだしてくれた。
「ほーんと、ちゃっかりしているよな。おれになってから性格が変わったんじゃねー?」
楓くんはヒジで、樹くんの背中をこづいた。
「僕がちゃっかりしているのは、おまえのせいでもあるんだぞ。楓らしくふるまっている影響がまちがいなくあるだろうな」
樹くんは、楓くんのように口の端をあげてニヤッと笑った。
「なんだとー! だったら、勉強してもおれの頭がちっともよくならねーのは、どういうわけだよ! こないだだって先生に言いわけするの大変だったんだからなっ」
「さあー? 単なる努力不足なだけと思うけど」
ふたりの言い合いがはじまった。
