わたしは口をポカンとあけたまま、公園とグラウンドをへだてる緑色のフェンスの前で足を止めてしまった。
樹くんと楓くんが、サッカーボールをけりあっていたんだ。オレンジ色の日差しを受け、ふたりの長い影がグラウンドに伸びている。
「ける前に相手を見て、けるときにボールを見るんだ。軸足を踏みだすときは、パスをだす方向に向けるんだぞ」
楓くんが樹くんに向かってテキパキ指示をだす。
「わかった」
樹くんは真剣な表情でうなずき、ポンッとボールを前にけりだした。
今はサッカーの基本、インサイドキックの練習をしているらしい。
もともと運動神経がいいこともあって、すでにコツをつかんでしまったみたい。
ちょっとひいき目かもしれないけれど、キックのできだけは楓くんとほとんど肩を並べているように見えたんだ。
「すごいなあ、樹くん。あっというまに上手になっちゃって……」
