「理子……」
「だって、またケガしたらイヤだもん。そんなのイヤだよ。ねっ、やめようよ」
小さい子みたいに、わたしはだだをこねた。
でも樹くんは無言だ。
楓くんも静かに樹くんを見つめたままだった。
「だまってないで、楓くんももっと説得して!」
すがる思いで、楓くんをふり返る。
「……アニキ、本気なんだな?」
楓くんは静かに口をひらいた。
えっ、止めてほしいのに。
どうしてそんな、けしかけるようなことを……!
「楓くん!」
「理子、何も言うな。おれはアニキに聞いているんだ」
わたしはハラハラしながら、ふたりの顔を見くらべた。
ふたりともわたしがいるのを忘れてしまっているみたい。食い入るようにおたがいを見つめあっている。
どのくらい、そうしていたんだろう。
「ああ」
楓くんの視線を受けとめたまま、樹くんはうなずいた。