樹くんのサッカー経験は、わたしたち三人で遊んだ以外は、体育の授業や球技大会でやった程度だ。ちょっとやそっと練習したからって、どうにかなるもんじゃないってことは、わたしにもわかる。

 だから、わたしは止めたかったのだけど、樹くんの決意は固かった。

「けど、一年生でもどんどん出場させてくれるって監督が言ってたんだ。コレってチャンスだろ。およそ一か月も休んでいたのに、僕にも、いや、楓、おまえにも等しくチャンスをもらえたんだ。監督やほかのみんなの配慮と期待だってあると思う。だからこそ断れないよ。そう思わないか?」

 樹くんの言うことはもっともだった。

 でも、どうしたんだろう。なんか、樹くんらしくない。

 こんなの、相談じゃなくて決意表明だよ。

 とても賛成できないよ……。

 わたしは樹くんのうでを引っぱった。

「樹くん、樹くんにわるいけど、わたしは正直、休んでほしいって思ってる……」