「今日も朝から大変だったね」
お昼休みに、仲よしの有本優雨ちゃんが言った。
わたしたちは机を真向かいに動かして、お弁当を食べていた。
もう六月も今日で終わり。
なのに、梅雨の気配は感じられなかった。
真っ昼間の教室は、うだるような暑さだ。
「ほんと大変だった……」
わたしは今朝のことを思いだし、苦笑いを浮かべた。
氷でキンキンに冷やした水筒のお茶を飲むと、のどの内側だけが一瞬、冷えた。
ふう、おいしい。
「ファンの子たちも毎朝こりないね」
優雨ちゃんも紙パックのイチゴミルクをチューッとストローで吸う。
「う、ん……」
わたしは、朝のできごとを考え考え、うなずいた。
『あの子また、野々村くんたちといっしょに歩いてる。何様だろ、自分のカバン持たせて』
『幼なじみってだけで、仲よくしてもらえていいねー』
『本当! たいしたことないのにね』
樹くんと楓くんのファンのひとたちは、わたしの存在をこころよく思っていない。
つまり、彼女たちを不愉快にさせているのは、わたし。
理由は、地味でたいしたことないくせに、わたしがいつも、ふたりのそばにいるから。
ぐるぐる何度考えても、同じ結論にたどり着く。