わたし、ふたりが戻ることしか考えていなかった。

 戻れなかったときのことを、まったく考えていなかった。



『とりあえずね、元に戻るまではこのまま演技しないといけないよね。樹くんは楓くん、楓くんは樹くんになりきるんだよ』



 それなのに、なんの確証もないまま、ふたりに無責任なことを言ったりして。

 どうしよう!

 ガクゼンとした、ちょうどそのとき。

「理子?」

 うしろから声をかけられた。

 一瞬、息をのんだ。

 わたしは足を止め、目をこらしてそのひとを見た。

 コンビニのレジ袋をさげた楓くんが立っている。

「かっ、楓くん……! アイスを、買いにいってたの?」

 暗い顔をしていたらダメ。わたしはあわてて笑みをつくった。

 けれど、とりつくろうには遅すぎた。

「ああ、まあな。それよりなんだよ、ユーレイでも見たような顔して」