玄関のドアを少し押しあけると、ふたりの男の子がわたしを待ちかまえていた。

 彼らはふたりとも、わたしと同じマンションの同じ階に住む幼なじみだ。

「おはよう、理子(りこ)

 やわらかな瞳でニコッと笑いかけてくれたのは、野々村樹(ののむらいつき)くん。

 サラサラの栗色の髪に、スーッと鼻筋が通った顔立ち。

 穏やかな声の響きも、うっとりするくらいステキ。

 わたしと同じ中一だけど、年上みたいに落ち着いているんだ。

 そして――。

「おっせーぞ、理子!」

 切れ長のこわい目でかみついてきたほうは、野々村楓(ののむらかえで)くん。

 深い夜のような黒髪に、くっきりとした目鼻立ち。

 すごく石頭で、わたしに偉そうな態度をとってばかり。

 同級生だけど、独裁者みたいに横柄なんだ……。



 これでもふたりは、正真正銘のふたごのきょうだいだ。

 樹くんがお兄さんで、楓くんが弟。

 声も髪の長さも体形もそっくり。

 けど、表情や仕草がおどろくほどちがっている。

 性格はもちろんのこと、学校の成績、つきあっている友だち。

 わたし――間宮(まみや)理子――に対する態度なんかも。