「じゃあここで待ってる。」

「ありがとうございます」

先生の車からおりて、家のドアをおそるおそる引く。

そうっとくつをぬいで、初めて男性物のくつがあることに気づいた。

少し不気味な甘いにおいがする。

初めてのにおいだ。

そして、お母さんのいるであろうリビングをのぞいてみる。

「お母さん…。」

そっと声をかけてみると、振り返って私と目があったのは知らない男の人だった。

「…あの人、誰?」

その男の人がお母さんにそう聞く。

「恋衣…!?あんた何で帰って来たの!?」

お母さんはヅカヅカと歩み寄って来る。