By,穂貴

――「私だって、笑えるなら笑いたいし」

――「っ…。
別に、倒れないし…。
今の私はもうそんなこと――」

――「今の私には先生に話せませんからっ…!」

――「先生は、先生には…。
私の気持ちなんてわからないくせにっ!」

――「…私の気持ちも、私の過去も、何にも知らないじゃないですか⋯!」

不思議な子だなあ、とは思ってた。

でも、そこまで酷い話だとは思わなかった。

噂には聞いてた。

日向 恋衣の家は、危険だって。

日向さん自身も、人間関係うまくいってないって。

小学生のとき、いじめにあってたって。

軽い話だと思って聞き流してた俺が悪い。

「俺が担任だったら、何か変わってた?」

日向さん、ごめんね。

気づいてあげられなくて、ごめん。

もっとはやく、気づくべきだったのに。

彼女の涙を見て、心からそう思った。

まだ、中学生なのに。

こんなにちいさいのに。

何で1人で抱えこもうとしてるんだよっ…。

力になれなくてごめん。

もう、1人きりで全て解決しようと思うな。

そう思って、再びベッドにねかせた。