「…日向さん、よく笑うようになったよね」

「だって、笑いたいときは笑ってもいいでしょ?」

ーー「笑えばいいじゃん。
かわいいのに、もったいない」

お世辞でも、先生は「かわいい」って言ってくれた。

その笑顔を、私は二度とすてないから。

「あ、そう言えば、1回私のこと"恋衣"って呼んだじゃん?なんで?」

「え、何でって言われても…覚えてないんだけど」

「えー、覚えてないのー?」

「うん、覚えてないわ。ごめんね?
あ、でも多分ポロッと出ちゃったんだろうね」

「ポロッと出るってどういうこと?」

私は少しずつ、大人になってるんだ。

日向恋衣の人生は、きっと、これから楽しいんだよね?

「ポロッと出るはポロッと出るだよ。てか数学進んでる?」

「すすんでないです!」

「そこ自信満々に言うところじゃないからねー?」

ーーいつか、言える日が来たら。