翌日は灰色の雲が隙間なく空を覆う曇天だった。
分厚い雲に指を突き刺せば、そこから一気に水がもれそうだった。
まるで私みたいじゃないかと楓は恨めし気に空を睨む。
樹とは日比谷駅近くのカフェで待ち合わせをしている。
ランチをして映画を観るという、これまで何度となく繰り返してきたデートのパターンだが楓は緊張していた。
約束した時間5分前に店に入ると樹はすでに窓際の席に座ってぼんやり外を見ていた。
楽しそうでもつまらなそうでもない。
本当にただ外に視線を向けているだけという感じだった。
楓がテーブルの前に立っても樹は気づかず、名前を呼ぶとようやく顔を上げた。
「待った?」
樹は笑みを浮かべて軽く首を振った。
楓はパスタセットを樹はBLTセットをオーダーし、いつものように仕事のこととか気になったニュースとか、とりとめなく話す。3週間ぶりのデートで話はたくさんあるはずなのに話ははずまない。
楓は美幸から送られてきた写真が引っかかっていたせいだが、樹もいつもと違う。
無口だし何かに気をとられているのがわかる。
あの彼女のことを考えていて、楓と過ごすこの時間がもう面倒なのだろうか。
そんな風に考えると食欲も萎え、どうしてこんなガサガサして食べにくいものを頼んでしまったのだろうと楓は後悔する。
どうしたのだろうと樹のことを考えていたら「どうしたの?」と逆に聞かれて驚く。
「えっ?」
「あまり楽しそうじゃないから。映画、キャンセルする?」
分厚い雲に指を突き刺せば、そこから一気に水がもれそうだった。
まるで私みたいじゃないかと楓は恨めし気に空を睨む。
樹とは日比谷駅近くのカフェで待ち合わせをしている。
ランチをして映画を観るという、これまで何度となく繰り返してきたデートのパターンだが楓は緊張していた。
約束した時間5分前に店に入ると樹はすでに窓際の席に座ってぼんやり外を見ていた。
楽しそうでもつまらなそうでもない。
本当にただ外に視線を向けているだけという感じだった。
楓がテーブルの前に立っても樹は気づかず、名前を呼ぶとようやく顔を上げた。
「待った?」
樹は笑みを浮かべて軽く首を振った。
楓はパスタセットを樹はBLTセットをオーダーし、いつものように仕事のこととか気になったニュースとか、とりとめなく話す。3週間ぶりのデートで話はたくさんあるはずなのに話ははずまない。
楓は美幸から送られてきた写真が引っかかっていたせいだが、樹もいつもと違う。
無口だし何かに気をとられているのがわかる。
あの彼女のことを考えていて、楓と過ごすこの時間がもう面倒なのだろうか。
そんな風に考えると食欲も萎え、どうしてこんなガサガサして食べにくいものを頼んでしまったのだろうと楓は後悔する。
どうしたのだろうと樹のことを考えていたら「どうしたの?」と逆に聞かれて驚く。
「えっ?」
「あまり楽しそうじゃないから。映画、キャンセルする?」
